繰り返し実験のお話

研究の進め方

10人の子どもたちといっしょに研究をしているときでした。みなさん、1回で終わりだと思っています。

  • 10人の子どもたちの視点
  • 10人が作った実験装置
  • 10人がそれぞれのペースで行った実験
  • ・・・

これらの条件で子どもたちは1回限定の実験をします。

子どもたちが出した実験結果は全員正しい。でも、大人のみなさんは予想できるように、たった1回の実験ですべて同じ値になりませんよね。

ではどうするか?


正しい実験結果を得るために、各実験条件の精度をあげます

視点、実験装置、実験時間を指定します。人が可能な限り、均一な条件で実験を行います。

これは、大人の研究者でも同じことをしています。

論文の「材料と方法」の項目で、長さ、温度、湿度、反応条件を数字で記載するのは、実験の精度をあげるためです。


正しい実験結果を得るために、実験回数を増やします

実験条件の精度をあげました。でも、10人の子どもたちは、だいたい同じような結果になっているのに3人の子どもたちは変な結果が出ました。

全員、実験結果は正しいです。でも、人は神様ではありません。気が付かない何らかのブレが実験中にあったのかも知れません。

このようなときは、何度か繰り返しやってみると答えがわかります。

ブレたのが単なる誤操作なのか、それとも、実験の範囲で認められる値なのか・・・

誤操作ならば、それが起きないように「材料と方法」を改善します。

子どもたちから文句を言われました。

何回繰り返すの!?

一度、子どもたちといっしょにある実験をしました。1回のみの実験では十人十色。よく分かりませんでした。

繰り返し実験数を増やしました。5回、10回、15回・・・。何となく数字は収束していきましたが、ときどき変な値がでました。最後は30回繰り返しで落ち着きました。

本当は、収束したある答えを得るためには、どのくらいの数の実験をしなければならないかは決まっています。小学生には学ぶのは早いですが、どこかでその理由を学ぶ機会はあった方がいいと私は思います。


繰り返し実験の恩恵

こういう言い方は科学の世界では適切ではありませんが、繰り返し実験をしますと、実験者の技術が上がります。

本当のことを良いますと、初めの実験データは使わずに、実験技術が向上したときの最後の方のデータを使った方が研究では精度の高いものとなります。

何回くりかえすの!?

子どもたちはこのセリフを私にいいましたが、そのまま研究者からも出てくるセリフです。

繰り返し実験の恩恵として、

  1. 実験技術が上がる
  2. 忍耐力がつく
  3. 実験結果を見極める目が鍛えられる

ですね。1は研究では必要なことです。2は根性論ですね(笑)。でも、ものごとをやり切るためにはこの忍耐力はとても重要です。

そして、1と2の末にたどり着く3は、新しいものを発見するときにとても重要な武器になります。

私が現役の研究者だったころは、繰り返し実験で見極める目が鍛えられました。当たり前のことは沈んで、異常なことは浮き上がって見えました。

私はこのような感覚を持ちながら、新しいものを発見していました

繰り返し実験に耐えた子どもたちは、

先生!

何か変だよ!

と何度も私に声をしてくれました。

科学は人類にとって平等です。小学生が見つけた発見は、大人でも驚かされます。

みんな!

〇〇くんが面白いものを見つけたよ

実験を一度止めて、みんなで見てみよう!

繰り返し実験は、正しい科学の道へ導くだけでなく、人の成長と仲間の繋がりを強めます。ぜひ、根気強く研究してくださいね。

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